民事再生手続中にスポンサーが撤退したが、新たなスポンサーを選定して事業再建を果たした事例

1 相談者の概要

相談者のA社は、関東の郊外に小さな工場を有する、従業員20名ほどの会社でした。

A社は、多額の研究開発費をかけ、苦難の末、半導体製造に使用する研磨液のリサイクルという、ニッチな技術を開発しました。従来は使い捨てであった研磨液を再利用できコストの削減が図れるとして、業界内で注目を浴び、大手半導体メーカーからも取引を求められるようになりました。

2 民事再生申立て

こうして事業がようやく軌道に乗り始めた矢先、リーマンショックを契機とする半導体不況により、受注が急減しました。研究開発費のための融資の負担も重くのしかかり、2010年頃から、A社は資金繰りに窮するようになりました。

A社は、会社の立て直しのため、スポンサーとなる支援先の確保に動いていましたが、これがままならないうちに資金繰りは急速に悪化していき、2011年、ついに手形の不渡りを発生させるに至りました。

A社は急遽、スポンサー候補のひとつであった某投資会社に対し、民事再生手続を前提とした支援要請を行いました。同社はこれを受諾し、民事再生手続開始申立後には当面の事業資金を確保するための貸付(DIPファイナンス)を行うことを約するなど、A社を全面的に支援する意向を表明しました。これを受け、A社は、私たちが代理人となって、裁判所に民事再生手続開始の申立てをしました。

3 東日本大震災とスポンサー撤退

ところが、申立てからわずか3日後に、東日本大震災が発生しました。

幸い、工場・従業員とも、地震の直接の被害は受けませんでしたが、A社には大きな苦難が待ち構えていました。原発事故に起因する計画停電のため、電力の安定的な供給に不安要素が生じ、また、大口取引先が被災して当分の間受注を見込めなくなり、資金繰りに多大な影響が生じることとなったのです。

さらに追い打ちをかけるように、支援を約束していた投資会社より、震災によりA社の再建はもはや見込めないとして、スポンサー撤退の申し出がされました。

4 新たなスポンサーのもとでの再建

投資会社の対応は、信義にもとるものでしたが、私たちは憤る間もなく、すぐに次のスポンサー候補探しに着手しました。A社の資金はすでに底をつき始め、支援がなければ民事再生手続は早晩、頓挫するしかない状況に追いつめられており、新スポンサーの確保は一刻を争う喫緊のものだったからです。

といっても、震災直後の、経済の先行きも見通せない状態の中で、破綻した零細企業を支援するところなど望むべくもなく、先行きは暗澹たるものでした。

そのような中、私たちは、A社の取引先で、震災後もA社に納品の継続を要請していた某有名企業に、支援を求めるべく、面談の要請を行いました。面談を担当した同社の資材調達部門の責任者に事情を説明したところ、この責任者は、自社での支援はできないものの、A社の事業をこのまま潰してしまうのは大変惜しいので、心当たりのあるところに打診してみるとして、その場で、某上場企業の役員に電話をかけ、ぜひA社代理人と会って話を聞いてみてほしいと伝えました。

この橋渡しによって、当該上場企業の役員との面談が実現しました。A社の状況等を改めて説明して支援をお願いしたところ、前向きな回答を得ることができました。

このような私たちの動きが業界内に伝わったのか、スポンサーの撤退を公にしていなかったにもかかわらず、支援の名乗りを上げる企業が次々と現れました。著名企業の出資先である化学メーカーや、海外に本拠を置く世界有数の半導体資材メーカーの日本法人も支援を申し出るに至り、期せずして、A社争奪戦の様相を呈することとなりました。

この頃から、震災後冷え込んでいた各社との取引も、徐々に復活するようになりました。A社の状況に配慮し、取引条件について優遇措置を講じてくれる取引先などもあり、資金繰りも回復し、震災による事業価値の毀損も何とか食い止めることができました。

支援先については、複数候補による入札手続きを経て、最終的に、海外資材メーカーの日本法人が正式にスポンサーに選定されました。同社が提示したのは、撤退した旧スポンサーの条件とは比較にならない、破格の好条件でした。その後、裁判所の許可を得て、同社にA社の事業を譲渡しました。

事業譲渡の対価を弁済原資とする再生計画案は可決・認可され、従業員の雇用も守られ、事業の再建を果たすことができました。

5 まとめ

本件は、一度は行く末が危ぶまれましたが、あきらめることなく解決策を求め続け、また、取引先の理解と協力を得たことによって、無事再建を果たすことができました。

事業再生においては、取引先との協調が欠かせないこと、苦境に遭っても屈せず、必ず再建するという強い信念を貫く姿勢が重要であることを、改めて認識させられた事案でした。