取締役の不当解任を理由とする損害賠償請求が認められた事例

1 相談の概要

相談者は、某企業(非上場)の代表取締役でしたが、株主総会の決議により、取締役を解任されました。

この解任が、意に反する不当なものであったとして、今後の対応について相談に来られました。

2 具体的対応

2-1 解任手続の有効性の検討

取締役の解任手続が有効なものであったかを検討しました。

この点については、会社に残された資料を確認し、また、社内の協力者(他の取締役等)にもヒアリングするなどして、慎重に検討を行いましたが、株主総会の招集・決議等一連の手続に瑕疵は認められず、解任自体は有効なものと判断せざるを得ませんでした。

取締役の解任については、以下の記事を参考にしてください。

 

2-2 損害賠償請求

そこで、本件解任には正当な理由がないものとして、会社法339条2項に基づき、会社に損害賠償請求を行うこととし、訴訟を提起しました。損害賠償の内容としては、取締役を解任されなければ得られたはずの、残存任期期間中の報酬、賞与、退職慰労金としました。

会社側は、解任は正当な理由に基づくものであるとし、その根拠として、相談者が社内の各方面に働きかけて会社の乗っ取りを図ろうとしていたなどと主張しました。

また、損害賠償についても、①報酬は変動制であり、任期中継続して支払うことは確定していない、②賞与は会社の利益を前提として株主総会の決議により支払いが決定されるものであり損害とならない、③退職慰労金は定款等に定めが全く存せず成立しない等と主張し、請求権の存否及び内容について争いました。

これに対し当方は、解任理由に関しては、会社側が指摘する相談者の社内での諸々の動きはむしろ会社の利益を慮ってのものであり、乗っ取り等を画策したものでは一切ないこと等を証拠とともに主張しました。

また、損害についても、①報酬については従前の支給実績から見て変動制を取っていたとはいえない、②賞与については、本件においては会社が一定の経常利益を達成した場合に必ず支払われる、確定した報酬であり、「賞与」は名目に過ぎない、③退職慰労金は、前任の代表取締役が退任した際に支給がされており、そのような前例等からすると、本件においても、相談者の在任時の会社の業績や在職期間からして前任と同水準の退職慰労金が認められてしかるべきであった等と反論しました。

双方の主張がほぼ出尽くした段階で、和解手続に入り、ここで、裁判所は、解任理由・損害賠償とも、当方の主張が有利である旨の心証を開示し、当方請求内容に概ね沿った和解金の支払いを会社側に勧試しました。

そして、最終的に、当方請求額に近い水準の和解金の支払いを受ける内容で和解が成立しました。

3 まとめ

不本意な取締役の解任がされた場合、まずは解任の手続の有効性を検討すべきです。この種の問題が生じやすい非上場のオーナー企業などでは、株主総会について極めて杜撰な手続きが進められることがまま見られるので、解任の効力自体を争う余地がありえます。

解任手続は有効であったとしても、解任に正当な理由が存しない場合は、損害賠償を会社に請求することができます。在任期間中に得られたはずの報酬のみならず、賞与・退職慰労金も、場合によっては、損害になり得ます。

解任された後も、会社と対峙する方途は残されているので、あきらめず、必要な資料の収集等を図りつつ、可能な請求・主張を展開していくことが重要です。